M-Times 2019.8

「現場」を見る 2019.8

 松田進税理士事務所の荒木です。今回から暫くは仕事として普段やっていることについてアレコレ書いていきたいと思います。

 まず、松田事務所の大きな特徴の一つとして、お客さんのところへ基本的に月に一度行くというものがあります。(これを僕達は小難しい言葉ですが、「月次巡回監査」と言っています。)月次巡回監査は、僕がこの事務所に入った時から当たり前のように行われていたので、僕もそうすることが当り前となっていて、そりゃあ行かないよりかは行く方が色々な資料もすぐ見られるしいいわなぁくらいの感じで特に深く考えずにやっていました。でも最近になって、お客さんのところへ行くことにはとても大切な意味があるのではということを感じるようになってきました(今頃ですが・・・)

 それは、息子(4歳)のことで「はっ」と気付く場面があったからです。息子はかなり奔放に育てていることもあり、他の子とはちょっと違った行動を取ってしまうところが多々あります。例えば幼稚園の入学式の後、教室で他の子がきちんと椅子に座って先生の話しを聞いている中、息子だけは床に寝そべって意味不明な行動を取ったりと、その他にも武勇伝は数え切れません・・・

 そんな子だからというわけでもなかったのですが、幼稚園と関係がある研究所で、臨床心理士に発達障害の検査をしてもらうという機会があり、検査を受けてみました。発達障害検査の結果はというと、「全然問題ない」ということだったのですが、子育ての過程で、この方針で合っているのかと不安に思うことが次々出てくるというのと、その研究所が幼稚園の向かいにあるので、割と日頃から気にかけて息子の様子を見てくれたり、接してくれたりするという利点もあり、その後も定期的にカウンセリングを受けて成長過程のケアを行うようにしています。

 そのカウンセリングに僕も同席したことがあるのですが、一番驚いたのは、臨床心理士から出てくる言葉の一つひとつが自分の中にすっと入ってきたことです。単に数字だけを見ての一般論や、積み重ねた経験での話をしているのではなく、普段からきちんと息子を見て、接して、感じて、というようなことをやっている中で出て来た言葉なのでめちゃめちゃ説得力を感じました。

 例えば、「〇〇くんは、・・・と思われがちですけど、この前も・・・ということがあって、今日の〇〇くんの場合も・・・・ということだと思います。だから大丈夫ですよ」と言われたら、その「大丈夫ですよ」という言葉の重さは、例えば、単に数字を並べての「これは数値が標準値よりも数パーセント低いだけですので大丈夫ですよ」の「大丈夫」と全然違ってきます。

 僕たちはお客さんのところへ月に一度は行くことによって、どんなオフィスで、どんな従業員がいて、どんな雰囲気でみんなが仕事をしていて、どんな風に取引先等から電話がかかってきて・・・というような会社の雰囲気を肌で感じることができる・・・・(はずです。)ですから、月次での結果を見ながら話す際でも、単なる数字の比較じゃなく、数字の背景にあるもの、そういうものを感じ取った上での言葉ということになり、カウンセリングの際の僕のように、その言葉を受取る側の社長の中にもすっと入ってくる・・・・(はずです。)

 というのはあくまでも理想で、今現在できているかというと、なかなかそこまではということになってしまっています。しかし、目指すべきはそういう事だろなぁというのは常に思っています。

 税理士事務所の経営面からいったら、全てのお客さんのところに月1度行くというのは、効率が悪いということになります(1人が1ヶ月に回れる上限は自然に決まってくるので。)また、会計システムや通信技術がどんどん進化していることから、事務所にいたままでの「監査」もやろうと思えば普通にできる時代になってきています。この場合、「距離」という限定がなくなりますので、どんなに遠隔地にある会社であっても「お客さん」にできますし、今後はそういう税理士事務所もどんどん増えてくるのではと思われます。

 でも、どんなに非効率であっても、距離的に行ける範囲が限られるとしても、少なくとも月に1度はお客さんのところへ行き、「現場」を感じた上で、社長とあれこれ話せるような税理士事務所でありたいなぁと思います。